5月。
アマダイの絵に惹かれて国立ハンセン病資料館で開催されている菊池恵楓園・金陽会絵画展へ行ってきました。
奥井喜美直さんの作品「アマダイ」は作者の病やその生活についての知識が何もなかったとしても、非常に惹きつけられる絵画だと思いました。
私が初めてハンセン病のことを知ったのは、瀬戸内芸術祭に大島が参加した時のことでした。
もちろん学生時代に歴史の授業か何かで学んだような気もするのですが、恥ずかしながら当時は教科書の文字を追うだけのことで、それについて深く考えたり、知ろうとすることもありませんでした。
大島へ行ったのが、もう何年前だったか思い出せないけれど、芸術祭の期間外だったので、島へ行くフェリーの中も観光客らしき人はおらず、おそらく看護師であろうと思われる女性と、郊外学習でやってきたと思われる地元の中学生らしき集団だけでした。
当時30代になって、やっとそれを知った自分と、もっと若い頃からその場へ行って学んでいる彼らとの違いみたいなことを考えたりしながらフェリーに乗っていた時のことは、今でもよく覚えています。
大島では島で暮らしていた、そして現在も暮らしている人々の生活を身近に知るという感じでしたが、今回の資料館では、その歴史についてより詳しく知ることができました。
ただ、知れば知るほど信じられない・あるいは信じたくないような事ばかりで、仮に自分がこの時代に生まれていて、同じ境遇にあったとしたら…という想像を脳が拒否するような怖さや酷さ、目を背けたくなる歴史がそこにありました。
一番印象的だったのは、常設展示資料にあった中学生の女の子の答辞で、バレリーナを夢見るけれど、どうしてなれようか。塀の中の高校へは行きたくない、というような事が書かれていました。
バレリーナを見て素敵だな、あんな風になってみたいな、と願う女の子の気持ちはとてもよく分かるもので、会ったこともないその女の子が急に身近に感じられた瞬間でした(バレエなんて一度もやったことないけれど、私もそんな風に憧れたことがある)。
その一方で、彼女がおかれていた状況は、今の私からすると、とても信じ難い、想像することすら困難なものであり、私は自分勝手に遠くに感じたり、身近に感じたりしていたのですが、そんな私のオロオロする気持ちなんて何も関係なく、現実にあった歴史を前に、ただ立ちすくむばかりでした。
絵画展は7月31日まで開催されています。